神回と称されるのにふさわしい素敵なM-1だった。もともとエバースと真空ジェシカが好きで、今年のM-1はともにめちゃくちゃ面白かった。
エバースは緊張しいだから、噛むんじゃないかという不安の声もあり、見ている側としても緊張感があったものの、終わってみればミスなく完璧だった。最初、じっと笑いのない時間を耐えて、「末締め」で笑いが起きてから始まり、物語的な世界が繰り広げられて、最後にピタッと美しく着地した。去年の「ケンタウロス」に「動物園」、「ドッペルゲンガー」のネタもそうだったけど、エバースのネタは現実に根差しながらも空想的な要素もある、映像が想起される雰囲気が魅力的で、審査員のノンスタ石田さんも、「想像力を支配される」と評していた。
真空ジェシカの一本目の「商店街」もいっぱい笑った。政治ネタも入っていたのに、全然政治ネタっぽさがなくて、あくまでお笑いが主なのが余計に格好よかった。真空ジェシカのネタは、言葉遊びが癖になる。「NHKを、観る」「ゆうじという人」「個人経営のチェーン店」「仮想中華」などなど、言葉の微妙な差異で違った世界を見せる、わくわくするような楽しい展開が繰り広げられた。
真空ジェシカについては、ナイツ塙さんのコメントがよかった。「真空ジェシカって、大学生のときに落研の先輩でめちゃくちゃ面白かった人達が作ったような感性を未だに保って、感性がすれてない。腹ちぎれるくらい大学生の楽しかったときを思い出した。めちゃくちゃ面白かった。」
この塙さんのコメントの途中、隣で大吉さんが、昔を思い出すかのように笑っていたのもよかった。
両方のコンビとも、本当に面白かったから、ファイナルにどっちも残ってほしかった。結果的には、真空ジェシカだけが残った(エバースは4位)が、あの二本目のアンジェラ・アキのネタもよかった。ただ、優勝と準優勝の令和ロマンとバッテリィズは、単純に面白いという以上に、会場や心を掴んで一体となっていたのが凄かった。令和ロマンは、二年連続のトップバッターで最初に出てきて、「終わらせよう」の言葉で掴んだ段階で、なんとなくもう全てが令和ロマンのための空気になっていたような気がした。
来年こそは、エバースと真空ジェシカのファイナルを観たい。川北さんが去年のM-1のPVのなかで言っていた、「感動させたくない、だけはありますね」というのが、今でも残っている。お笑い芸人らしい、まっすぐな言葉だなと思う。
ヤーレンズの出井さんがXで挙げていたM-1後の打ち上げ時のエバースと真空ジェシカ