芸術

坂口恭平『独立国家のつくりかた』

坂口恭平『独立国家のつくりかた』

本の紹介

坂口恭平さんは、1978年生まれで熊本県出身の建築家、作家、芸術家です。もともと熊本県熊本市で生まれたあと、福岡県に転居し、その後9歳のときに再び熊本市に戻ってきます。秘密基地をつくるのが好きだった坂口さんに、父親が言った言葉が「ならば建築家になれ」でした。その言葉に触発され、大学は建築学科に進もうと建築関連の本を読み漁り、その過程で知ったのが、建築家である石山修武さんの『バラック浄土』という本でした。この本を機に、石山さんに興味を持ち、彼が教授をする早稲田大学の理工学部建築学科に指定校推薦で進学。大学時代は、頭を剃って、毎日同じ作業衣を着ながら、ギターを背負い、アフリカ製のタイヤサンダルを履き、石山さんの授業をいちばん前の席で聴くなど、完全に浮いた学生として通学。当時、この格好は、ヘンリー・ソローの『森の生活』とジャック・ケルアック、ボブ・ディラン、鴨長明のリミックスだと言っていたそうです。この石山さんを勝手に〈私塾〉の先生として仰ぎ、直接的にも多くのことを学んだ坂口恭平さんは、のちに出版にも繋がるホームレスの家を取り上げた『0円ハウス』を卒業論文のテーマにします(参照 : 生々しい知性との出会い──石山修武『生きのびるための建築』書評)。

大学卒業後は、石山さんの建築研究所や、喫茶店のアルバイト、ヒルトン東京ラウンジボーイなどの経験を経て、個人の私塾の開設や個展などを開き、音楽や陶芸、絵画から農業や料理まで様々な表現活動を行なっていきます。また著書も多数出版し、多岐に渡って「生きる」ということを表現している現代アーティストです。

その坂口恭平さんの著書のなかで名言を紹介したい本が、『独立国家のつくりかた』です。この本は、東日本大震災や原発事故の政府対応に不満を抱き、それならいっそ新しい政府をつくってしまおう、と坂口さんが思い立ち、新政府初代総理大臣になります。新政府というと、政治的な本なのかと思いきや、政府を批判するのではなく、新しい世界を勝手につくる。これは、そのときの記録や想いを記した哲学書でもあります。「僕は独立国家をつくったのだ」。(参照 : DIYで政府を! -『独立国家のつくりかた』|おすすめ本レビュー)。思考が硬くなり、自縄自縛に陥っているひとにとっても、いったん解き放ってくれる自由の一冊です。坂口恭平さんは現在、熊本市内で畑仕事をしながら、色々な表現活動をしたり、Twitternoteで自身の思考の流れや日々の出来事を発信しています。

本の名言

何かを変えようとする行動は、もうすでに自分が匿名化したレイヤーに取り込まれていることを意味する。そうではなく、既存のモノに含まれている多層なレイヤーを認識し、拡げるのだ。

実際、学生時代に「おれ、こういうことやるんだ」と吠えていたちょっと変わった個性的な人とか、結局何もつくらないし、発信しないし、びびって、大人になったら隠れてしまうのだから。悲しすぎるよ。

自分の態度を決めるにはどうしたらいいか。まず、相談しない。自分の頭で考える。自分の頭で考えられることだけで考える。他人の言葉をそこに入れて考えてはいけない。(中略)いらん知識は抜き、昔から体験してきたことだけで考える。