このサイトでは、アフィリエイト広告を利用しています。また、感想に関しては、一部ネタバレを含んでいる場合があります。

ハチクロのローマイヤ先輩

羽海野チカさんの漫画『ハチミツとクローバー』(ハチクロ)が好きでよく読んでいた。

ハチクロの登場人物は、男性陣では、主人公の竹本、それから森田、真山、女性陣では、はぐみや山田など、どこか不器用な面もありながら魅力的な若者たちが描かれ、それぞれが切ない片思いをしている。

不器用で、ある意味で、欠けているゆえの人間味が、登場人物たちの魅力に繋がっている。

一方で、この恋愛模様とは一切関係なく、みんなに愛される、伝説の登場人物として一瞬だけ現れ、すぐに消えてしまったキャラクターとして、「ローマイヤ先輩」がいる。

正直、結局最後は、ローマイヤ先輩のような人が、結婚するなら特に、安心感もあり、頼りになるのではないかと思う。

ローマイヤ先輩は、身も心も大柄の人物で、ハチクロの1巻の第4話に出てくる。

ある日、竹本くんや真山さんの住んでいるボロアパート、その103号室がずっと空室になっていることに疑問を抱いた竹本くんが、真山さんに、「この部屋って、なんでずっと誰も入らないんですか」と尋ねる。

真山さんは、物憂げな表情で、「そこはローマイヤ先輩の部屋だ」と答える。

本名は記載がないものの、ローマイヤ先輩は、父親が病気で倒れ、大学を休学して実家の農業を手伝っている、「素晴らしい人」だと真山は説明する。

それからまもなく、ローマイヤ先輩がアパートに帰ってくる。JA庄内の箱を抱えているので、ローマイヤ先輩の出身は山形なのだと思う。喋り方も、東北なまり全開だ。

ローマイヤ先輩は山形県庄内地方の出身ですが(箱に「JA庄内トマト」と書いてある)、彼の方言は地元出身&在住の私が読んでも全く違和感が有りません。

羽海野チカ『ハチミツとクローバー〈1〉』のAmazonレビュー

ローマイヤ先輩は、ソーセージハムもたくさん持って帰り、貧乏で腹を空かせたアパートの住人たちは、たちまち輝きを取り戻していく。

この「ローマイヤ先輩」という名前の由来は、ローマイヤ先輩が持ってきてくれる「ローマイヤハム」にある。

羽海野チカ『ハチミツとクローバー』 1巻

ローマイヤハムは、実在する会社で、社名はドイツ人創業者の名前に由来する(今でもあるのか分からないが、羽海野チカさん直筆のローマイヤ先輩のイラストが日本橋のローマイヤハムには飾られていたそうだ)。

作中、ローマイヤ先輩が、アルバイトでハムの配送業をしていることから、これだけのローマイヤハムが手に入るようで、ローマイヤ先輩の外見の特徴は、なんと言っても、その筋肉隆々な肉体と、195cmの高身長、そして包容力いっぱいの笑顔だ。

ローマイヤ先輩の名言と言えば、東京の就職難に沈む真山さんや森田さんに、仏のような笑顔で言った、たくましく格好いい一言。「ま、どーしでも行ぐどこさねぐなったら最後は俺ん家さ来い。俺が面倒見でやる。食うには困らせねーがらな」

しかし、事態は急変する。その後、再びお父さんが病で倒れ、ローマイヤ先輩は故郷に帰っていく。そして、以降、ローマイヤ先輩は、本編には登場しない。

ただ、番外編として、7巻でローマイヤ先輩の物語が描かれている。

物語の舞台は、荒川ランド(あらかわ遊園がモデル)。荒川ランドのマスコットキャラで、伝説のヒーロー「ニャンざぶろう」は、もともとは身長167cmの普通のマスコットだった。

入場者数にも大した貢献のなかったニャンざぶろうだったものの、マスコットの「中の人」が変わるや否や、入場者数も一気に10倍になる。

身長は195cmあり、その身長と胸板と包容力で子供から大人、ヤンキーまで虜にする。

もちろん、そのマスコットの「中の人」は、「ローマイヤ先輩」だ。

しかし、冒頭で触れたように、ローマイヤ先輩は、父親の病の関係で故郷に帰り、荒川ランドも苦境に立たされるかと思いきや、新しい「中の人」のおかげで第二次黄金期が訪れるのだった。