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雑談

ミニバスの応援歌

ミニバスの応援歌

ある日、高校バスケの全国大会の映像を見ていたら、応援歌と言っていいのだろうか、バスケ部の応援の音が、無性に懐かしくなった。

前にも書いたように、僕は子供の頃にバスケ部に入っていた。小学校の頃のミニバスから、中学バスケ、高校に関してはずっと不登校で結局学校を辞めることになったので部活動としてはほとんど参加はしていない。それでも、僕の子供時代にとってバスケの存在は大きかった。応援も楽しく、ベンチにいたときには、試合中ペットボトルをぽこぽこと叩いて声を上げ、レギュラーとして試合に出るようになってからも仲間の応援歌に気分が盛り上がった。

応援のバリエーションもたくさんあった。ミニバス時代なら、試合開始のジャンプボールのとき、手拍子をしながら、「飛べ飛べー、飛べ飛べー、飛んでみろー」と言って名前を呼ばれる。シュートを決めたときも、リズムに合わせて手振りを交えた応援歌があった。ミニバスだと、僕の小学校では、鳴り物応援は行わず、手拍子が主だった。ミニバス全体でルールが決まっているのかどうかはちょっと定かではない。ただ、ミニバスで鳴り物を使った応援は聞いたことがないので、マナーなどガイドラインが明文化されているのかもしれない。でも、子供心に、ミニバスの応援は一体感があって楽しかった。

総じて、ミニバスが一番自分でも楽しかったし、弟の応援をしているときも面白かったような気がする。その理由として、一つは、ミニバスは、他のスポーツと同じように流れもあるし、メンタルでも影響を受けるもの、小学生だと特に、その変化が容易に起きる。だから、ダイナミックな逆転劇や下剋上も起こりうる。それは、まだ子供ゆえの幼さもあるし、レギュラーの5人全員がすごい実力で、控えの選手層も厚い、みたいなことは滅多にないので、たとえば主力選手が退場したときの影響も、ミニバスは相当に大きいように思う。一人の退場で、がらっと試合展開が変わる。

それから、ミニバスは、一般のバスケと同様に試合中の人数は5人だが、一試合で合わせて10人以上が出場しないといけないというルールがある。たぶん、今もあると思う。幅広く子供たちに機会を、ということなのだろう。大体、第1クォーターに、レギュラーメンバー、第2クオーターにベンチメンバーを起用し、第3、4クォーターにもう一度レギュラーメンバーを使う。あるいは、第1クオーターと第2クォーターに、レギュラーメンバーとベンチメンバーを半分ずつ織り交ぜ、組み合わせを考える。そして、第3、4クオーターでレギュラーメンバーを揃える、という形が多かった。これは、相手チームとの相性もそうだし、こちらのメンバー間の相性も含め、戦術が問われ、全員で一体となって戦っている感覚が強くなった。この辺が、ミニバスの面白さであり、魅力だと思う。

ルールに関しては、細かな秒数に関するルールの違い以外で、大きな点としては、ゴールの高さ、ボールの大きさ、スリーポイントがないこと、という3点が挙げられる。特に、ミニバスにはスリーポイントがないので、以前も富永選手に関する記事で触れたように、僕のポジションはシューターだったのだが、遠くからシュートを決めても同じ2点ということで、この辺りに関しては強みが半減する。そのため、中学に入り、スリーポイントが始まったときは、自分はようやく“スリーポイントシューター”になれるんだ(実際にはボールも重くなり、ゴールも高く、スリーポイントはだいぶ遠いので、すぐにはボールが届かなかった)というわくわく感があった。

ちょっと話がそれたので、バスケの応援歌に話題を戻そうと思う。

中学時代になると、体格だけでなく、応援でも迫力が増した。中学生のときに行っていた応援の歌は、たとえば、ジャンプボールのときは、「飛べっ飛べっ飛べっ、飛べ飛べ高く、飛べっ飛べっ飛べ飛べー!」。相手からファウルを受けたときは、「いて、いて、いててててっ!」。前後半の残り3分くらいになると始まる歌で、「燃えろ、燃えろ」と声高に歌う応援歌もあった。

ミニバス時代は、小学生なので声変わりもなく、高い声で応援歌を歌っていたのが、中学生になると、声も野太く、より戦いの歌という雰囲気が出てくる。応援で使うアイテムも、空のペットボトルやメガホンの他、太鼓をテンポよく叩き鳴らす学校もあった。また、鳴り物楽器の類は使わず、足踏みと手拍子で「ズンズンチャッ、ズンズンチャッ」と音を鳴らす、NBA風の応援も格好よかった。どうやらあれはQueenの『We Will Rock You』を模したものだったようだ。歌の部分がなかったので知らなかった。バッシュで床を踏み鳴らし、重低音がコートまで響いた。体育館という限られた空間なので、音もよく響く。

NBA We Will Rock You

バスケは、応援歌だけでなく、キュッキュッというバッシュの音やドリブルのときにボールが地面をつく音、シュートの際に外れてリングに弾かれる音、ネットに吸い込まれる音、一瞬訪れる静寂、こうした音のメリハリやリズムなども醍醐味であり、音楽的な側面は強いと思う。中学になると、小学校の頃以上に、部員の数が学校や地域によっても差があり、名門や強豪と呼ばれるチームは、物凄い数の部員たちの熱い想いがコートを覆っていた。

思い出深いのは、一年生大会(ずっと後輩として雑用やボール拾いをしていた一年生にとっての初めての晴れ舞台)の県のベスト4をかけた試合で、その地域の小学校からの流れもあり毎年強い、優勝候補の強豪校と対戦したときのことだ。

僕たちの中学は、ベンチに一年生部員が全員入っていたのに対し、相手の学校はベンチ外の選手も大勢二階席に溢れ、試合中、太鼓とメガホンと野太い声の応援が、上から覆いかぶさるように降ってきた。ああ、これが強豪校、ベスト4常連校なんだ、と思わず引きつった笑みがこぼれた。体格差や実力差以上に、その応援に飲み込まれた。相手選手たちの雰囲気もさることながら、応援が作った空気に飲み込まれた、というのは初めての経験だった。

試合中のことは、ほとんど覚えていない。試合開始のときに突如として鳴り響いた応援歌に空気が震えた、その瞬間だけが鮮明に記憶に残っている。手も足も出ない、といった力の差で、確か20点ほどの差をつけられ、惨敗した。僕自身も、得点は5点くらいしか決められず、途中で“ももかん”を食らって立ち上がれなくなるなど、本当に散々だった。

バスケの応援歌というと、あの試合を思い出す。でも、あのときの「圧倒される」というのも、今思えばいい経験だったなと思う。