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龍が巻き付いた剣

久しぶりに会った親が、何かメルカリで売れそうなものがないかということで、実家に残っていた僕が子供の頃に集めていたカードゲームなど懐かしいおもちゃの類を紙袋に入れて持ってきた。袋には、カードゲームの他に、僕の名前が子供っぽくたどたどしい筆跡で書いてある、猫のイラストのブリキの筆箱もあり、筆箱のなかには、見覚えのある剣のキーホルダーが何本も入っていた。キーホルダーは、金や銀や銅の色をしている龍が巻き付いた剣の形で、僕が外して保管していたのか、全部チェーンはついていなかった。

龍が巻き付いた剣

久々の再会まで、すっかりこの龍の剣の存在を忘れていた。懐かしかった。子供の頃に、なぜか観光地のお土産で、その土地のグッズやお菓子などよりも、この龍の巻き付いた剣のキーホルダーに惹きつけられたことを思い出す。なぜ、このキーホルダーがほしくなったのだろうか。その頃、別に友達と見せ合うということもなく、誰かに自慢するためでもなく、ただただ個人的に、かっこいいな、と思っていた。細かな模様や、複雑な造りも美しい。一つ一つの雰囲気から、子供ながらに、この剣はバランスも絶妙で完璧な剣だ、この剣はちょっと弱い、といったランク付けもしていたように思う。

年齢的には、いくつくらいだっただろうか。幼稚園の年長か、小学校の低学年くらいだったかもしれない。集めた剣のキーホルダーは、ランドセルなど鞄に付けていた記憶はなく、覚えている限りでは、家にあったヒーローもののフィギュアなどに剣を持たせて戦わせる、といった遊びをしていたように思う。学校に持っていく筆箱にお守りのようにして入れていた光景も、うっすらと残っている。

この龍の剣のキーホルダーは、男子なら誰もが一度は通る通過儀礼というわけでもなく、知っている人は知っている、知らない人は知らないと、同世代でも、認知度にばらつきがあるようだ。確かに、僕が子供の頃に、お前の龍の剣のキーホルダーかっこいいな、どこで買ったんだよ、みたいに、友達同士で盛り上がったことはなく、僕の周りには、龍の剣仲間はいなかった。密かに、自分のなかで、かっこいいな、と惹かれていただけだった。振り返ってみれば、この龍が巻き付いた剣のキーホルダーは、個人的に一番最初に行った「コレクション」だったのかもしれない。

ネットで調べてみたら、この剣のキーホルダーを制作している業者は、「コヤマ」という名前の会社で、どの剣も同じ名前かはわからないが、正式名称は、「魔界のドラゴン夜光剣キーホルダー」というようだ。魔界、ドラゴン、夜、光、剣。男子が好きそうな、かっこいい言葉がたっぷり入っている。業者の取材記事によれば、いつから販売されるようになったのか、正確な発売時期は不明ながら、大体1995年〜2000年頃で、ちょうどドラゴンクエストブームも相まって、この種のキーホルダーの販売が始まったと言う。剣とドラゴン、ものすごいシンプルながら、完全に男の子の感性を揺さぶってくる。観光地の土産物屋でよく販売されている理由は、流通の仕組みによるものだと言う。

メーカーは数量が多く出る業界に販売(卸し)します。売り上げを上げる方法で、一般的に行われています。30~40年くらい前、観光地のお土産売り場で、キーホルダーや根付、バッジなどが良く売れていました。

メーカーは販売力のある、観光地の物産問屋に営業をかけ販売していくことになります。観光物産問屋は日本全国にあり、そこに納めると観光地のお土産売り場に商品が並びます。当時非常によく売れていたドラゴンキーホルダーが、全国の観光物産問屋を通して日本中に流通したわけです。

“龍が巻き付いた剣のキーホルダー”はなぜどの観光地でも売られている? 製作会社に話を聞いてみた

今考えてみると、観光と言えば旅行であり、「未知の世界への旅」とも言える。子供心にはいっそう、その感覚が強かったのではないかと思う。そして、旅というのは、すなわち冒険でもあり、もしかしたら、「旅先で剣を買う」ということが、知らず知らずのうちに、RPG風のワクワク感にも繋がっていたのかもしれない。