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夢の話「山奥から逃げる途中の出来事」

深夜に目が覚めた。毎晩のことで、いつも何度か目が覚める。それでも昔と比べたらずいぶんと眠りはよくなった。薬ももう飲んでいない。目が覚め、おぼろげな意識のなかで、ベッドの横に置いてあった読みかけの漫画を二冊読んだ。読み終わり、時間は何時だろうか、と思いながら窓を見た。外はまだ暗かった。深夜の2時くらいかもしれないし、もう明け方に近いかもしれない。時間を確認しようと、スマホの画面に触れたら、明け方の5時くらいだった。もうちょっとだけ寝ようと、毛布のなかに潜った。

夢を見た。知らない山奥の駐車場で、大柄な犬を連れた見知らぬ男に僕は追いかけられていた。必死に逃げていると、犬を連れた男の姿が見えなくなり、今のうちに山から降りようと考えた。帰る手段としては、山を下りる長い道路を、歩いて帰るしかなかった。その道路は、車がよく走っていたので、歩きながら、途中誰かに乗せてもらおうと思ったものの、誰も乗せてはくれなかった。途中、一台の車が目に留まった。車には、昔好きだった子の名前が書かれていた。その車が、立体駐車場に入っていった。僕も、乗せてもらえるか聞こうと、立体駐車場のなかに向かった。

車が停まり、降りてきた女性に声をかけた。よく見ると、面影はあったものの、ぎょっとするほど痩せ細り、表情は老婆のように老いていた。隣には、幼い娘を連れていた。車がないから乗せていってくれないか、とお願いした。「可哀想に」と同情はされたものの、これから行く場所があるからと断られ、彼女は娘と歩き去っていった。それから、僕はまた歩き出した。しばらく歩き続けると、沢山の人がいる道の駅のような場所に着いた。立ち飲み屋のような店が昼でも賑わっていた。この辺りなら、誰か乗せてくれるかもしれないし、タクシーも走っているかもしれない。そんなことを思いながら、ふらふらと歩いていた。

建物の前に立っていた横長の大きな看板には、「ロバの里」と書いてあった。近くにロバの牧場があるようだ。道の駅のなかにある広いスペースのような場所に行ったら、より賑わっていた。誰かがイベントをしているようだった。ステージでは、芸人さんが司会でイベントをしていた。彼らは僕の好きな芸人さんで、こんなに酷い目にあったが、これは幸運だ、と思いながら、お客さんの並ぶ最後列のほうで見ていた。まもなく、ステージに上がって一緒におしゃべりをする、というコーナーになり、最初は誰も手を挙げなかったが、ぽつぽつと手を挙げる人が増え、次々と指差されていった。突然、僕の隣に立っていた少し年上と思われる風貌の男が、「俺も喋るから一緒に行こう」と誘ってきた。よく見たら、別の有名な芸人さんだった。本当に一緒に行ってくれますか、と尋ねたら、もちろん、と乗り気だった。僕たちは手を挙げ、指差されると、二人でステージのほうに向かった。スタッフの指示で、ステージ裏の木製の三階建て構造になっている足場の三階に立った(一階と二階はすでに人が並んでいた)。僕たちは、そのままコーナーが始まるのを待っていた。

しかし、気づいたら一緒に来てくれた芸人の男が姿を消していた。心細そうに待っていたら、スタッフの一人が、「あの柴犬と旅をする番組に出ている人ですか」と尋ねてきた。ああ、そうだったそうだった、僕は柴犬と旅をして、ここまで来たんだ、と柴犬と二人で歩いている光景が脳内によぎった。ふと横を見ると、先ほどの男の代わりに、大柄な占い師の女性が真ん中に陣取り、何やら話をしていた。横柄さの象徴のように、両サイドの人間の肩に手を回している。僕のほうにも、その大柄な占い師の手が回り、その腕は、服の上からでもはっきりと分かるくらいにひんやりと冷たかった。冷たいですね、と呟いてみたが、向こうには聞こえなかった。芸人の男は親しみがあったし、一緒に出ようと言ってくれたのに、どこかへ消えてしまったことで、一気に不安になった。「もうすぐ本番が始まる」と誰かが誰かに言っている声がした。

僕は会場に掛かっている時計を見た。あと2、3分で始まる、という時刻だった。