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ミスチルの暗い曲

ミスチルの昔の曲の歌詞を読むと、その頃の時代を真っ直ぐ歌っていることもあり、当時の社会の暗さが描かれているものがある。一方で、その暗さは、決してもう過ぎ去った過去のものではなく、むしろ、今の全体に蔓延した暗さと繋がっている。

歌のなかで描かれている社会の部分的な暗さが、より全体に馴染み、溶け込み、ありふれた暗さになったことによって、遠いものから、身近なものになり、それゆえにより生々しく聴こえてくる。

たとえば、好きなミスチルの曲に、『everybody goes -秩序のない現代にドロップキック-』がある。この曲の歌詞を見ても、全然古びていない。リリースされたのが、1994年で、僕が小学生の頃だ。1994年に起こった出来事をネットで調べても、知識としては聞いたことがあっても、自分の経験のなかにはなく、全く覚えていない。

小学生だった僕にとっては、ゲームをしたり、友達と遊んだり、いじめられて泣いたり、夏休みの読書感想文がしんどかったり、好きという感情が少し分かってきたような気がしたり、そんな日々のことでいっぱいだった。だから、この曲も、リアルタイムで聴いていたわけではなく、後々になってミスチルを聴くようになって、すでにそのとき「昔の曲」として聴いていたのだが、こんなにはっきりと歌っているのは清々しいな、と思った覚えがある。

ただ、さすがに当時も、この歌詞は過激と映ったのか、どこの会社もタイアップは受け入れてくれなかったようだ。たとえば、「ベッドじゃ社長の上にまたがって、それでも夢見ているムービースター」といった芸能界の暗部を比喩でもなくそのまま言葉にしていることから、スポンサーも敬遠したのかもしれない。

それにしても、ミスチルの暗い雰囲気の曲が好きだな、というのは改めて思う。暗い曲、ちょっと不穏な空気が流れる曲。他にも、『フェイク』みたいに、曲はアップテンポだが、歌詞は生々しくえぐる歌も好きだし、『デルモ』や『Pink〜奇妙な夢』『シーラカンス』のように曲調も鬱々しく、人間の暗さや不気味さ、不思議な世界が描かれている歌も、描写や曲とも相まって、ちょうどいい重みで響く。美しく静かな曲だけでなく、ちょうどいい重みが欲しくなるときに馴染む。

この『everybody goes -秩序のない現代にドロップキック-』では、歌詞の最後、「皆病んでる、必死に生きてる」という言葉で締められる。狂った社会のなかで、みんな病んでる。でも、それは必死に生きてることでもある。大人になり、色々な現実を見聞きし、そうだよな、と思いながら、このフレーズが脳内で再生される。皆病んでる、必死に生きてる。