銀杏BOYZ「やわらかい地獄って天国にも似てる」
若い頃から、よくゴイステや銀杏BOYZの曲を聴いていた。カラオケでは、『BABY BABY』『もしも君が泣くならば』『銀河鉄道の夜』『佳代』、あとは『SKOOL KILL』なども歌った。サビなど高い部分もあり、そういう場所はかすれながら、あるいは休みながら、仲の良かった幼馴染もよく歌っていたなと思う。
もちろん今でも聴いている。結構昔の曲だが、あの頃を思い出しながら、ちょっと懐かしいな、という感覚とともに感傷的に聴くというよりは、20年経っても、同じ感覚で聴ける。古びない曲だなと思う。
最近、カセットテープで音楽を聴くことも多い。アナログのプレーヤーを買うに当たって、レコードとどっちにしようか悩んだが、結局ラジカセを買った。個人的に思うカセットテープの魅力として、少し遠いような、温もりのある音質があり、銀杏BOYZやブルーハーツはカセットで聴いたらきっと似合うだろうなと思いながら、ネットで調べると、銀杏の峯田和伸さんはカセットが好きで、いくつかカセット版の曲集も出していた。しかし、限定発売だったらしく、新品ではもう売っていないので、中古で売っている場所を探し、『ラストラーダ』を買った。
以来、しょっちゅう聴いている。やっぱり合うなぁと思う。カセット、もっと出してほしい。『ラストラーダ』の収録曲は全部で11曲で、『BABY BABY』や『光』、それから『ぽあだむ』なども入っている。『ぽあだむ』も、好きな曲の一つだ。
この曲は、もともとはそれほどよく聴く曲でもなかったものの、色々なミュージシャンが銀杏BOYZの楽曲をカバーするトリビュートアルバム『きれいなひとりぼっちたち』(これがまた凄くよかった)で、クボタタケシさんのリミックス版を聴いてから、改めて好きになった。可愛いポップな曲調で明るい世界なのに、どこか暗く、随所に生々しい歌詞も見られる、その調和がいい。
『きれいなひとりぼっちたち』
・夢で逢えたら / 麻生久美子
・なんとなく僕たちは大人になるんだ / 安藤裕子
・ぽあだむ クボタタケシ REMIX Version I / クボタタケシ
・援助交際 / クリープハイプ
・ナイトライダー / GOING UNDER GROUND
・YOU & I VS. THE WORLD / THE COLLECTORS
・NO FUTURE NO CRY / サンボマスター
・BABY BABY / sebuhiroko
・夜王子と月の姫 / 曽我部恵一
・駆け抜けて性春 / ミツメ
・あいどんわなだい / YOUR SONG IS GOOD
・漂流教室 / YUKI
・東京 / YO-KING
タイトルの「ぽあだむ」という言葉が、どんな意味かは、今も分からない。なんとなく、ポエジーの響きと似ているなとは思っていたが、あまり深く考えたことはなかった。歌詞には、「やわらかい地獄ってもう、天国にも似てるから」という一節があり、不思議と、この一節が心に沁みる。ほんと、その通りだなと思う。
やわらかい地獄は、天国にも似てる。
この意味も、受け手によって色々な解釈があると思う。たとえば、「依存」という解釈がある。誰かに依存することは、天国でもあり、一方で、やわらかい地獄でもある。なかなか抜け出せず、徐々に蝕まれていく。あるいは、この一つ前の歌詞で、「僕の部屋は僕を守るけど、僕をひとりぼっちにもするよね?」と歌っているので、天国にも似ている「やわらかい地獄」は、「孤独」を意味しているのかもしれない。昔、引きこもりだった時期もあったし、今も基本引きこもり体質の自分としては、部屋が僕を守りながら、ひとりぼっちにもする、という感覚が痛いほど分かる。
やわらかい地獄だし、天国にも似ている。
この『ぽあだむ』では、他にも括弧で括られた、誰かの台詞みたいな一節が歌詞に描かれる。その一つ一つの何気ない言葉も、さりげなく、とてもよい。「ねえなんか日常って、武器のない戦場ね」「ノイズってきもちーね、カオスってきれいだね」
ゆっくりと海の底に沈んでいくときに、脳内に優しく響きそうな、素敵な台詞が並ぶ。