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夢の話「川沿いの街の泥棒と作家の講演と祖母の短歌」

昨夜は、頭を色々と使ったこともあり、疲れがずいぶんと溜まっていた。気づいたら眠っていた。眠ったのは、日付の変わる頃だったと思う。

夢を見た。僕は、好きなデザイナーが講演をするということから、衝動的に新幹線を予約し、遠く離れた、ある地域まで向かった。新幹線は、走りながら鈍行に変身し、見知らぬ駅に着いた。辺りの土地勘は全然なかった。河川敷の道を僕は歩いていた。川のすぐ近くに駅があり、河川敷周りにぽつぽつと店が並んでいた。町や人の雰囲気から、治安がよくないのだと理解し、ポケットに入れていた財布を鞄の奥深くに押し込んだ。

突然、誰かが、折り畳み傘のようなものを投げ、「泥棒だ」と叫んだ。人々の目は、その投げられた折り畳み傘らしきものに気をとられた。その瞬間、叫んだ男が、バイクに乗って走っていった。走り去っていくバイクに気づいた一人のおばさんが、「泥棒だ」と叫んだ。そのおばさんのバイクだったようで、荷物も一緒だったのか、耳に突き刺さるような声で泣き叫んだ。おばさんの周りに人が集まってくる。怖い町だ、と思いながら、僕は歩き出した。

目的地まで、どういう道順で行けばいいのか分からず、もと来た場所に戻ってみたり、さっきの河川敷を歩いたりしていたら、バイクを盗んだらしき男が、母親に連れられて訪れ、警察に謝罪していた。バイクを盗まれたおばさんは、近くで安堵していた。僕は、ああ、意外とすぐに捕まったんだな、と思いながらその横を通り過ぎていった。

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僕は中学校の廊下を歩き、教室に入った。教室の窓側の一番後ろが、僕の席だった。教室に、ある有名な作家が入ってきた。担任教諭の知り合いのつてで講演を頼まれ、ちょうど近くに所用で来ていたから、ここに来たんだ、と作家は説明をした。僕だけが、なぜか教室に入る前にその事情を聞かされていた。クラスメイトは、その作家のことが誰か気づかなかった。あの人は誰だろう、と壇上に立っている男をいぶかしげに見ていた。彼は、「どうも◯◯です」と芸人の名前を出して笑いを誘った。その芸人のファンらしき生徒が嬉しそうに甲高い声を上げた。作家の男は大した話をしなかった。僕は、初期の作品と明らかに変わったことについて、その理由は一人称から三人称に変えたことが大きな理由なのか、といった質問しようと考えていた。そんな質問をしたら失礼じゃないか、と不安に思いながら、質問の時間が来るのを待っていた。

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僕は、実家の二階にある寝床に横になっていた。外はよく晴れていた。頭の上には、子どもの頃によく童話を聞いていた黒いラジカセがあった。僕は、横になりながら、亡くなった祖母のことを、祖母が生きているうちになんでもっと短歌に残しておかなかったんだろう、と後悔した。それから、僕の部屋の半分透けた扉に祖母の影が映り、僕の名前を呼んでいたときの光景を思い出し、短歌ができないものかと思ったが、どうしても文字数が足りず、よくわからない俳句ができた。

目が覚めた。朝7時過ぎ、頭が疲れているのがよくわかる目覚めだった。頭の中の澱んだ液体が、ぐるぐるとかき混ぜられるような眠りだった。ただ、途中で一度も目が覚めなかったのは久しぶりで、睡眠としては決して悪くはなかった。