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惑星基地ベオウルフの歌詞に出てくる「ストラドレーター」の意味

銀杏BOYZのカセットテープを購入した。もともと一つは持っていたものの、新しく限定発売された『君と僕の第三次世界大戦的恋愛革命』と『DOOR』のカセット版がどうしてもほしくて買った。銀杏BOYZは、曲調も声もカセットに合っている。

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この『DOOR』のB面には、『惑星基地ベオウルフ』という曲が入っている。ゴイステの頃に発売されたシングル『青春時代』のカップリング曲で、銀杏BOYZでも歌われている。学生時代に聴いていたときは、それほど印象に残ってはいなかったが、今改めて流していると、歌詞の意味に多少わからない面はあっても、なんだか無性に耳に残る。クリスマスソングで、雪の降る夜の街が似合う曲だ。

歌詞の冒頭、「ああ、死にそうだ」と主人公は沈んでいる。「神様はこんな泣き虫の僕をきっと笑うだろう」とあるから、僕は泣いている。なぜ泣いているのかと言ったら、「宇宙の果ての城にあの娘はとらわれたまま」と理由が明かされる。一瞬、振られたことで泣いている失恋ソングか、と思いきや、「クリスマス・イヴまでにあの娘に告白できるかなぁ」と歌っていることから、この曲は失恋ソングではなく、「宇宙の果ての城」に閉じ込められたような悲しみを抱えている女の子のことを、自分の命と引き換えにしてでも救ってあげられたらと願う、ちっぽけな少年の恋の歌なんだと思う。「ああ、お星様はこんなちっぽけな僕をきっと笑うだろう」

それから、2番のサビのあとには〈語り〉が入る。「兎も猫もヘビも蛙も天使も高層ビルも羊飼いもストラドレーターも恋人たちも星座も、みんなみんな眠ってしまった」この動物たちが何に由来するのかはわからない。でも、並んでいるラインナップが絶妙だ。兎と猫、ヘビと蛙、天使と高層ビルと羊飼い。童話的でもあるし、宗教的でもある。幻想的で、夢の世界みたいな組み合わせだなと思う。ただ、この曲を聴きながら、いつも気になっていたのは、「ストラドレーター」のことだ。ストラドレーターとは、一体どういう意味なのだろう。

調べてみると、サリンジャーの代表的な小説『ライ麦畑でつかまえて』の登場人物に、主人公の少年ホールデンの寮のルームメイトとして、ストラドレイターという男が出てくるが、このストラドレイターから取っているようだ。ライ麦は好きな小説なのに、結び付かなかった。言われてみれば、ストラドレイターという傲慢ぷりが目立つルームメイトが出てきた。

蛙田 サブカルチャーへの出現はとても多い作家だと思います。私の世代だと、とても人気のある銀杏BOYZというロックバンドのアルバム『DOOR』(2005年)に収録された「惑星基地ベオウルフ」という曲の歌詞の中に「ストラドレーター」(『ライ麦畑』の登場人物)が出てくるんです。

尾崎 そうなんですか。

蛙田 本当に人気のあるバンドだったので、私の世代にとっては、サブリミナル効果みたいな感じで出会っている作家かもしれません。

尾崎 若い人でも、センスのある人はやはり読んでいて、それを自分の作品の中に入れていくんですね。それをまた若い人たちが受け継いでいく。そうであれば、非常に幸せな作家ですね。

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この『ライ麦畑でつかまえて』の小説の舞台が、クリスマス前のニューヨークでもあるので、物語の世界も取り入れているのかもしれない。

一方で、〈語り〉の続きでは、「メイテル、メイテル、さよならなんだね、メイテル」と呼びかけている。これは、アニメ『銀河鉄道999』に出てくる登場人物のメーテルのこと。歌詞のなかでは、メイテルと表記され、このメイテルが言ってくれた言葉として、「貴方はきっと幸せになれるわ。だって私を幸せにさせてくれたもの」という一節もある。この台詞は、アニメのなかに出てくる台詞からの引用なのだろうか。今度漫画を読んでみようと思う。ボーカルの峯田さんの声で語られる、この台詞も印象的に響く。

惑星基地ベオウルフ、というタイトルが何に由来するのかは、ちょっとわからなかった。でも、歌の雰囲気上、わからなくても、それほど気にはならない。なんなら、わからないことによって、より幻想度が高まるような気さえする。